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第5章 線

矢野さんとは・・・
お付き合いしてる、けど。

「なかなか上手くいかなくて」

思わず本音を口走って、アッと口元を押さえた私に
「色々あるよなぁ。男と女なんて」
と三木さんは苦笑いした。

その色々を乗り越えて、結婚するんだもんね。
結婚してる人ってすごい。

話の内容が聞こえなければ
仲良く、笑っているように見えたかもしれない。

三木さんは結婚していて、可愛い息子さんを私に自慢しているだけだけど
話の内容が聞こえなければ
仲良く、笑っているように見えたかもしれない。

そんな様子を、数日間立て続けに
矢野さんは見ていた。

私はそれを知らなかったとはいえ
矢野さんは、私に声をかける事も出来ず、
降車駅で私を見ていた―――