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横浜発 7:54
第6章 下
「この数日。スマホの電源切ってる?」

苦笑いとともに、図星を言われて下を向く。

「そんなに俺からの連絡が苦痛?」

そうじゃ、ない。

「さくらがいやなら、もう連絡しないよ」

そうじゃない。

「でも、ちゃんと聞かせてほしいんだ」

ゆっくりと波の音に消えるかのような落ち着いた声で
私の方を見ずに、話しかける。

矢野さんは・・・
私の答えに緊張している時、私の顔を見ない。
告白してくれた時のように。

「あの・・・」
「時間はたっぷりあるから、ゆっくりでいいよ」

優しく言われたその声に
考えなんかまとまらないけど正直に話し出した。

「矢野さん。7:54の電車に乗るの無理してませんか?」
「え?」

「先週、本当は忙しかったんじゃないですか?
研修の用意で・・・
もっと早くに会社に行くはずだったんじゃないですか?」

そう言った私をビックリするように見つめた。

「なんで?」

それは問い詰めると言うよりは
理由を言ってごらん、って感じの穏やかな声で。

「あの電車に乗るの無理してませんか?」

「だから、なんで?誰かに何か言われた?」
「・・・・」


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