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令嬢は元暗殺者に恋をする
第11章 裏街へ
アルガリタの町、もっとも賑わう繁華街イゼル通り。
道の両端にはさまざまな店が並び、町の中心部の広場まで連なっている。
ちょうど昼時ということもあってか、あちこちの飲食店からは、食欲を誘う匂いが漂ってくる。
往来は大勢の人で混み合い、買い物客を誘う呼び子の声が通りを賑わせていた。
「だから、やめた方がいい、っていうか髪の毛引っ張るなよ。いててて……」
シンは情けない声をあげ、背後を振り返る。そこには唇を引き結び、真剣な目でこちらを見上げるサラの姿があった。
サラの手が、シンの腰まである長い髪の毛を強く握ったまま離さないのだ。それどころか、握ったまま、いつまでも後をついてくるのだから困った。
道行く人たちの視線が二人に向けられ、くすりと笑って通り過ぎていく。
はたから見れば微笑ましい、恋人同士に見えるであろう。
いや、違うな。
兄妹だな。
と、心の中で呟きシンはため息をつく。
「私の決心は堅いの。ハルに会わせてくれるまでこの手、離さないから」
立ち止まり、シンはやれやれと力が抜けたように肩をおろす。
この様子では本当に、どこまでもついて来かねないと思ったからだ。
眉根を寄せ、シンは心底困ったという顔をする。
花柳街でサラに絡んでいたごろつきどもを、ひと睨みで追い払った凄まじさは見る影もなく、鋭利な刃のごとき気配もすっかり抜け落ちてしまった。
まるで別人のようだ。
とても同じ人物とは思えない。
「もう、帰れ。家の人が心配してるぞ。送ってやるから」
「帰らないって言ったでしょう」
振り切ろうと思えばいつでも振り切れるのだが、何となく放っておけない気がした。
見た感じ、そこそこいいところのお嬢さんという雰囲気だ。
そんなお嬢さんが会ったばかりの、どこの誰とも知れない男にいつまでも付きまとうわけがない、そのうちあきらめて帰ると思っていたのだが、これが予想に反してなかなか剛胆な少女であった。
いや、警戒心がなさすぎる。
道の両端にはさまざまな店が並び、町の中心部の広場まで連なっている。
ちょうど昼時ということもあってか、あちこちの飲食店からは、食欲を誘う匂いが漂ってくる。
往来は大勢の人で混み合い、買い物客を誘う呼び子の声が通りを賑わせていた。
「だから、やめた方がいい、っていうか髪の毛引っ張るなよ。いててて……」
シンは情けない声をあげ、背後を振り返る。そこには唇を引き結び、真剣な目でこちらを見上げるサラの姿があった。
サラの手が、シンの腰まである長い髪の毛を強く握ったまま離さないのだ。それどころか、握ったまま、いつまでも後をついてくるのだから困った。
道行く人たちの視線が二人に向けられ、くすりと笑って通り過ぎていく。
はたから見れば微笑ましい、恋人同士に見えるであろう。
いや、違うな。
兄妹だな。
と、心の中で呟きシンはため息をつく。
「私の決心は堅いの。ハルに会わせてくれるまでこの手、離さないから」
立ち止まり、シンはやれやれと力が抜けたように肩をおろす。
この様子では本当に、どこまでもついて来かねないと思ったからだ。
眉根を寄せ、シンは心底困ったという顔をする。
花柳街でサラに絡んでいたごろつきどもを、ひと睨みで追い払った凄まじさは見る影もなく、鋭利な刃のごとき気配もすっかり抜け落ちてしまった。
まるで別人のようだ。
とても同じ人物とは思えない。
「もう、帰れ。家の人が心配してるぞ。送ってやるから」
「帰らないって言ったでしょう」
振り切ろうと思えばいつでも振り切れるのだが、何となく放っておけない気がした。
見た感じ、そこそこいいところのお嬢さんという雰囲気だ。
そんなお嬢さんが会ったばかりの、どこの誰とも知れない男にいつまでも付きまとうわけがない、そのうちあきらめて帰ると思っていたのだが、これが予想に反してなかなか剛胆な少女であった。
いや、警戒心がなさすぎる。

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