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令嬢は元暗殺者に恋をする
第37章 それでも、あなたが好き
 伏せた時と同様、ハルはゆっくりと視線を上げた。と同時に、月にかかっていた雲が取りのぞかれ、再び皓々とした光を放ち地上を照らし出す。

 すべてを語ると決意したハルの瞳に、先ほどの迷いは消えていた。
 深い海の底を思わせるその藍の瞳に宿るのは、いつもの如く相手を射すくめるほどの強烈な光。

「レザンの〝姿なき者〟……暗殺組織だ」

 サラは目を見開いた。
 低く呟くハルの言葉に耳を疑った。
 一瞬、彼が何を言ったのか理解することができなかった。
 それほどまでにハルから聞かされた真実は驚愕であった。

「幼い頃より個人の性格をねじ曲げ、ただひたすら暗殺の道具として育てあげる。感情の欠落した闇に捕らわれたその心以外、すべてにおいて完璧な人間、存在自体が凶器。暗殺組織は各地に数多くあるが、レザンはこの世でもっとも最強だ。そして、何故彼らを〝姿なき者〟と呼ぶのか。レザンの暗殺者の正体を知った者は必ず始末する。だから、彼らの姿を知る者はいない。故に組織の存在すら世にあまり知られていない」

「あ、あ……あ……暗殺組織っ!」

 しんとした部屋にサラの声が響く。
 自分でも思っていた以上に大きな声を出してしまったと思い、サラは慌てて口許を両手で押さえ込んだ。

「そんなに驚かなくても、ある程度予想はしていただろう?」

 口に手をあてたまま、サラはふるふると首を振る。そして、開けていた口を閉じ、喉のつかえを飲みくだす。

「じゃあ、ハルは……」

「そういうことだ」

 そんな世界がこの世にあるなんて思いもしなかった。
 そこにハルがいたなんて。

 本当の地獄を知ることはなかったと、悲鳴を上げるように吐き出したハルの言葉を思い出す。
 そこでハルがどういうふうに育ってきたのかなど、想像すらもできない。

 ハルの抱えている闇。
 ハルの背後にあったもの。
 すべて知ってしまったら、もう後には引き返せない。
 もし、ハルが組織に見つかり捕らえられたら私も同じ運命となる。

 それがこの意味だった──。
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