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報酬
第1章 日常
日常の自分がいる。

朝起きて食事をして身支度をして仕事や学校へ向かう。

見なれた景色。いつもの風や匂い。

その日出会う人や物。

全てが現実。不確かなものなど一つもない、鮮明で決して否定できず逃げられない時間。

そんな中で網膜以外に映し出されるビジョンがある。
鼓膜以外に聴こえてくる音や声がある。

それらは気付かないだけで、目に見えたり耳で聞こえる物の同等、もしくはその何倍にも膨れ上がって一瞬で再生される。

脳内のそれは五感では決して味わえない苦痛や快楽を与えてくれる。

現実の個体の自分と脳内の精神体の自分を人は必ず持っている。

そのバランスを無意識に制御しながら毎日を暮らしている。

確かなのは時間だけ。

人はそれに気付かないで稀に境界を超えてしまう事がある。

サイコ的な犯罪や精神崩壊。
どこにそのスイッチがあるのかは誰もしらない。

それでも確実にそれはある。誰にでも。

夢と現実の記憶が曖昧なのは境界に気付かないから。

脳内での自分と現実の時間を生きる自分。
どちらも自分だ。

決して否定できない、紛れもない自分。

大好きな人を想像してみる...。

その顔も声も、匂いや口付けの味まで...

それはどこに映ってますか?どこに聴こえてますか?匂いは?味は?

五感ではないはず。



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