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報酬
第2章 変革
「また誤配ですよね?」

右手で眼鏡の位置を直す仕草は、彼女の説教が長くなる合図だ。

「先日お願いしましたよね?ちゃんと聞いてました?」

テーブルの上の本部からのFAX用紙ばかり見ていた。内容は分かってるし、それほど興味もない。

「お客さんからコールセンターに直接クレームが入ったんですよ!これ、一番マズイんですよ!言いましたよね?」

大きな胸だなぁ...何カップくらいだろう?パイ擦りとか出来るのかな?

「今日中に顛末書と始末書!提出して下さいね!」

こんな真面目そうな顔してるけど...挟んだりした事あるんだろうなぁ...え?顛末書?始末書?

「また残業ですか?」

「はい?これって貴方の責任ですよね?貴方のせいでアタシまで残業なんですよ?そんな会社の利益に繋がらない作業を残業と認める事が出来るハズないでしょ?」

またかよ...はぁ...

「とにかく!私が帰るまでに必ず提出して下さいね!」

時計に目をやると10時半。説教は聞いてなかったが、一時間続いた説教がやっと終わった。

静かになった会議室でひたすら書類を書き続ける。
説教を含めてもう二時間も残業している。
一銭にもならないのだが。

書き終えてイスにもたれて天井を見上げる...。

謝謝はまだアパートに居るんだろうか?


「ねぇ...名前で呼んでもいい?」

ザーーーーーーー。

シャワーの音と関係なく、その優しく柔らかい声は頭の中にはっきりと聴こえてきた。

「なにか出来るようになるんだよな?」

「うん。何かは分からないけど、君が望む事に必ず役に立つ事」

「望むこと...てなんだろうなぁ?金なら欲しいけど...それもなんか違う気がするし」

「嫌ならいいのよ?呼ばなくても」

心なしか声のトーンが下がる。

「いいよ」

「え?」

「契約...しようぜ。」

「どんな能力がつくか...わからないんだよ?」

「能力?まさか体がゴムになったりとか?」

「...。」

「大丈夫だよ。どうせ一度は終わらせようと思った人生なんだし、謝謝に生かされたようなもんだからな」

「あと...その見返りに君の何かを私がもらう事になるけど」

「何か...て?」

「...。」

「それも?分からないのか?」

「うん。最初はね。それでも良かったんだぁ。こうやって具現化されて、幸せだったし」



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