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明治鬼恋慕
第2章 落方村


「わぁ…っ」


クーン


「わたしも触るっ!」

「て、あーー! 駄目です!」


濡れ縁の下からぴょこぴょこと姿を現したのは、薄汚れた白色の仔犬であった。

それを見た少女は好奇心で目を輝かせ、次の瞬間には飛び付かん勢いだった。

その反応を予想していた焔来( ホムラ )は慌てて彼女の手を遮る。


「こいつ野良なんす。こんなに汚れちまってるし、もし噛み付かれて病気もらうようなことになったら…」

「平気だもん」

「何ですかその自信。千代様に怪我でもさせたら、旦那様に合わせる顔がない」


焔来に諭されているこの少女は千代( チヨ )と言う名だ。

千代はこの落方村の生まれで、名主のひとり娘である。


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