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聖杏学園シリーズ ー囚われの少女達ー
第13章 地下アイドルの秘密 編 1-1
幕が上がるまであと少し・・・

ステージに立っている私は足の震えが止まらないことに焦り、深呼吸を何度も繰り返していた。小刻みに震えているマイクを握っている右手を胸に押し付け、更に左手で押さえているのに震えが止まらない。
助けを求める様に同じステージに立っているメンバーを見ると、皆も同じ様に緊張しているのが分かる。センターには夏妃(なつき)、その左に涼奈(すずな)と心瑠(ここる)、右に愛美(あいみ)、そして一番右端が私、(舞風 まふ)だ。
リーダーの夏妃はキッと前を見つめて落ち着いているように見える。でもマイクを握っている右手は私と同じように胸にギュッと押し付けていた。他のメンバーも同じだった。
緊張しているのは私だけじゃないと知ってホッとするけれど、相変わらず足の震えが止まらなくて泣けそうになる。ここから逃げ出したい。

そんな時、急に夏妃が小さく早口で声をかけてきた。
「皆集まって!」
自然に両手を握って小さな円ができる。気合を入れる時には、いつもこのスタイルだった。
「私達、ファータフィオーレの初めてのステージ、絶対に成功させるよ!」
メンバー全員で頷き合う。
「思いっきり歌って踊って、とびっきりの笑顔でお客さんを虜にしちゃおう!」
「お~!!」

夏妃の掛け声が大きすぎて、前列のお客さん達にまで聞こえてしまった。
笑い声や拍手が聞こえてくる。でもそれで私たちの緊張も大分解れてきた。
皆に笑顔が戻ってくる。私の脚の震えも少し収まってきた。

目の前にある幕の向こうで待っているはずのお客さん達。どのくらい来てくれているのかは分かっていない。メンバー全員で幕が上がるまで見ないでおこうと決めたからだった。
たとえお客さんが1人でも全力で歌って踊る。とびっきりの笑顔を見てもらって元気になってもらう。お客さんが何人でもやる事はひとつだから、と5人の考えは同じだった。

今まで沢山練習をして来た。公園での練習中にバカにされたりもした。恥ずかしくても5人でビラを配り1人でも沢山の人に来てもらおうと努力もした。
でも本当に大事なのはこれから。
私達のステージでお客さんを元気にして、満足してもらう。そんなステージを繰り返せばきっと私達にも、次のもっと大きなステージに進めるチャンスが来る。

初めは地下アイドルでも可能性を信じた私達5人の、最初のステージの幕が今上がっていく。
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