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変質者の手毬唄・珍田一耕助シリーズ
第8章 「雷雨」

食堂に入ると、まだ昼を過ぎたばかりだというのに人気が無かった



「あら…?珍田一先生、今日は随分ゆっくりなんですねぇ?」


「あ…これは女将さん、おはようございます。今日は随分静かですけど、これは一体…?」


「あぁ…今日、小学校に小柳民吉が来てるんですよ」


「小柳民吉って…あ、あの喜劇役者の…ですか?」


「そうなんですよ、小柳民吉は隣の沢越村の出身でしてねぇ…。毎年この時期になると、帰省ついでに近隣の村を回って小学校やら役場やらで講演してくれるんですよ」


「ほう…そりゃぁ、随分と出来たお方ですねぇ」


「本当ですわ。ウチの辰雄も少しは見習ってもらわないと…」


「アハハ…。辰雄君だって立派に青年団で活躍されてるじゃないですか。きっと今に、このあわび山荘の立派な若旦那になってくれるでしょう」


「ウフフ。そうだと良いんですけど…。あ、そうそう!珍田一先生、お食事がまだですよね…何か用意しましょうか?」


「あぁ、これはすみません…。実は腹が減って目が覚めてしまったんです」


「あら…それは大変。ウフフ…ちょっと待ってて下さいね」



こうして朝食兼昼食にありついた珍田一は、かき込むように食事を平らげると、散歩がてら小学校にでも様子を見に行こうと思い立った


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