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変質者の手毬唄・珍田一耕助シリーズ
第9章 「雨上がり」

珍田一は自分でも信じられなかった


まさか自分がこんなにも繊細な舌遣いをすることが出来るなんて


いつもなら荒々しく貪るように女の身体を舐めまわす自分が…




それほどまでに愛おしかった


まるで絶対に傷つけたくない宝石を扱うように、優しく凛に触れた…


桜色の花は湿っていた


充分なのかもしれないが、珍田一は決して急がなかった


いつまでも凛の身体を愛撫していたかったからだ


1つに繋がりたい気持ちもあったが、このまま凛の発する吐息を聞いていたかった


周りの騒音も耳に入らない…地面に打ち付ける激しい雨の音も、空を切り裂く雷の音も


決して忘れる事のないように、しっかり記憶しておきたかった


数少ない凛の口元から発せられる音…吐息を…





ようやく珍田一と凛がひとつに繋がった頃、既に辺りは静かになっていた


遠くの方で蝉が再び鳴き始めている



薄暗い土蔵に光が差し込んで二人を照らし出している


光の帯の中にはキラキラと神秘的に輝く小さな埃が浮遊している…


まるで天が二人を祝福しているかのように






いつまでもこうしていられればいいのに…


このまま時が止まってしまえばいいのに…




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