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第1章 きっかけは大失敗から

　思わず、璃子は即答していた。

　璃子にとって、クビ以上に最悪の結果など考えられなかったからだ。

　この窮地を脱するためなら、何でもする覚悟で、璃子は藤崎の言葉を待った。

　相変わらず、数秒間の無言を経てから、藤崎が言う。

「島村に何をしてもらうかは、明日直接会ってから説明する。では、また明日」

　次の瞬間には、藤崎によって一方的に電話が切られていた。

　この急展開に全くついていけなかった璃子は、半ば呆然としながらも「助かった……のかな？　でも、あのクールで冷徹な部長が、こんな優しさを見せてくれるなんて。部長の頼みごと、どんなことだろう……。すごく不安」と考える。

　璃子の心の中では、「まずこのピンチを無事に切り抜けられるのか」と「切り抜けたとしても、部長が自分に何を要求してくるんだろうか」という二つの不安が渦巻いていた。