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夢…獏の喰わぬ夢
第8章 変化

彼女は本当に天使だった。

彼女の美しい肩甲骨にこの前キスしたばかりなのに。

そこから彼女の頭上まで伸び、折り返して地面に尽きそうなほどの大きな翼が生えている。

「本当に天使だったんだ。」

彼女は信じてなかったの?と言わんばかりの笑み。

そして空を見上げ、その大きな翼を広げる。

美しい、こんなに大きな翼が広がるなんて、そしてその翼が羽ばたいた。

助走するかふわっと浮くのかと思ったが、力強く、バサッバサッと翼は動く。

あっけにとられている僕に彼女は無言で手を差し伸べる。

もちろん僕には翼はなく、何だか泥まみれで汚い。

「一緒に飛べるの?」

彼女は微笑みながら頷く。

彼女の手だけ繋いで飛べるのだろうか?
半信半疑な僕は彼女にしがみついてしまう。

泥で彼女の白い衣が汚れる。
僕はますます不安になる。

彼女が何回か羽ばたくとふわっと地面から足が離れる。

僕は怖くなり上を見る。

彼女は黙ったまま羽ばたき、僕たちは地上からかなり離れた。

足元を見る、森も山も小さくなっている。手を離したら真っ逆様に落ちる。
とても不安になる。自分が飛べないからだろうか?
素晴らしい景色を楽しむ余裕はない。
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