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夢…獏の喰わぬ夢
第3章 春雨

頬には明らかに雨でないものが流れていた。

「ごめん。寒かったね。」

タオルを手渡すつもりでいた僕だが、彼女の気持ちを確認せずにタオルを広げて彼女をくるみ、その上から抱きしめていた。

彼女の頬に流れていたものはとても温かい涙だった。




どのくらい抱きしめていただろう。

僕の鼓動が彼女に聴かれてしまいそうで意識したその時、彼女の鼓動が聞こえてきた。


この時も僕達はお互いの気持ちを伝えなかった。
あれだけ不思議な告白を受け止めたのに、「好き」の一言が出なかった。


互いが鼓動を確認しあったら、恥ずかしくて少し離れた。
同時に視線が合い、こんな間近で彼女の瞳を見たことはなく、吸い込まれるようにまた彼女を抱きしめていた。


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