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初戀 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第1章 Boy meets girl
「ここだよ、ここ!今なかなか評判のカフェなんだよ」
当麻は友人達に引っ張られ、浅草のカフェ「浪漫」のテーブルに着きながら、周りを見渡した。
パリのムーランルージュを模したらしい安っぽいステージや調度品や絵画…。
数年前、本物のパリを観光した当麻には失笑ものだった。

…家に帰るのが気が重くて、寄宿舎の悪友の誘いで冷やかしに来たカフェだけど…
…やはり退屈そうだな…。
当麻はため息をつく。

だけど、家に帰ったら…

「でかした!望己!帝大医学部に現役合格するとは、さすがは私の息子だ!」
合格発表の通知を父親に見せた時の父親の異常なまでの喜びようを思い出す。
「お前はやはり私似だな。お母様に似たのは顔だけで本当に良かった!」
笑いながら望己の肩を叩く。

ユーモアのつもりなのだろうか。
ちっとも面白くもない。
黙りこくる望己をちらちら気にしながらも、父親の機嫌を損ねないように、おどおどしながらバカラのグラスにワインを注ぐ母親にもいらいらした。

「望己さんは本当にお父様似です。背もお高いし、スポーツにも秀でていらして…」
小さな声で父親の機嫌を取る母親…。
なんで、息子の僕に敬語を使うんだ。

「当たり前だ。望己は生まれながらにしてこの当麻病院の跡取りだからな。不出来な息子なんぞに育つ訳がない。なにしろ、私の息子だからな!」

めちゃくちゃな理論だ。
僕がもし勉強もスポーツもできない箸にも棒にもかからない劣等生だったらどれだけ冷たい扱いをするのだろうか…。
そう思うと、極上のローストビーフも輪ゴムを噛んでいるように味気なかった。

当麻はわざと音を立てて立ち上がり、
「ご馳走さまでした」
と、ダイニングルームを出ようとした。
母親が慌てて止める。
「望己さん、まだお食事の途中ですよ…」
「医学部のシラバスを見直さなくてはなりませんから、失礼します」
「望己さん!」

母親の縋るような声の後にご機嫌な父親の声が重なる。
「いい、いい。望己は高校の寄宿舎生活ですっかり自立したのだ。頼もしいじゃないか」
「…は、はあ…」

当麻はそんな両親の会話を振り払うように、足早にダイニングルームを出た。

…憂鬱だ…。
寄宿舎に戻りたいくらいだよ…。
ボーイが運んで来たぬるいビールを呷る。

…と、舞台袖から言い争うような声が聞こえ、望己は何気なくそちらに視線を移した。






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