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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 月光庭園
梨央に厚手の温かいケープを羽織らせて、月城が連れ出したのは、庭園の噴水であった。
…今宵は中秋の名月…
狭霧が昨夜教えてくれた通り、見事な満月が中空に輝いている。
大きな完璧な満月を梨央は月城に抱かれながら見上げ、わあ…と歓声をあげた。
「…綺麗なお月様…」
「今夜は中秋の名月なんです。…そしてこの月は、旦那様も今、お船の中でご覧になっておられますよ」
月城は梨央に優しく微笑みかける。
梨央はその綺麗な切れ長の瞳を見張る。
「お父様も?同じお月様を見ているの?」
「はい。…ロンドンに向かわれるお船の甲板からもこの月はご覧になれます。旦那様はきっと今、この満月をご覧になって梨央様のことを考えておられるに違いありません」
「…お父様…」
梨央はじっと月を見つめる。
白く滑らかな横顔は月明かりに照らされ、絵のように美しい。
…泣いておしまいになるかな?…と心配していた月城をよそに、梨央はにっこりと笑うと月城を振り返った。
「…じゃあこれからもお父様にお会いしたくなったら、お月様を見れば良いのね?」
「はい。この月はロンドンにも繋がっているのですから…」
梨央は月城の首筋に腕を回し、甘い吐息がかかりそうな距離から月城を見つめた。
「…それならもう寂しくないわ。…それに…梨央には月城がいるから…」
月城は思わず梨央を抱きしめた。
梨央からは冴え冴えとした白薔薇の香りがした。
「はい。月城はこれからもずっと梨央様のお側におります。生涯、梨央様にお仕えし、梨央様をお護りいたします。…例え…何があっても…」
…例え、梨央様がどなたかに恋をされ、その方と結ばれようと…
僕は梨央様の忠実な騎士であり続けよう。
…この美しく清らかな僕のお姫様の為に…。
梨央は夜に咲く美しい蓮の花のように薫り高く嬉しそうに笑った。
「月城…大好きよ」
月城は梨央の絹糸のような黒髪を愛しげに撫でる。
「…私もです。月城は梨央様が大好きです」
…愛しています、梨央様…。
…生涯、梨央様に告げることはないだろうその言葉を、僕はこの胸に封印する。
梨央は恥ずかしそうに笑い、月城にぎゅっと抱きつく。
月城は梨央に穏やかに微笑みかける。
「…ではそろそろお部屋に戻りましょう。お風邪をお召しになるといけませんから…」
梨央は素直に頷く。
月城は梨央を宝物のように抱きしめたまま、屋敷に戻っていった。



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