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第5章 Fly me to the Moon

…月日はまたたく間に過ぎてゆき、月城は帝国大学を首席で卒業し、更に株の勉強も続け、株の仲買人の資格も取得した。
北白川伯爵家での身分は第二執事に昇格。
屋敷内の業務に加えて、株の売買などで地道に伯爵家の財産を増やしていった。
忙しく、しかし充実の毎日を過ごす内に月城は26歳になっていた。

橘は
「由緒正しい北白川伯爵家が株に手を出すなど…いかがなものですかな」
と副業に関して苦い顔をしたのだが、伯爵は柔かな笑顔を浮かべつつも確固たる口調で諭した。
「…これからの貴族は家名だけにしがみついていては衰退してゆくばかりだ。新しい道を切り開くことも考えなくてはならない。…社会の情勢や世の中がどうなるかわからないのだから」
そして月城を見る。
「…月城、お前にはこの家の経理や経済を全て任せたい。私は仕事柄日本に滞在する時間もあまりない。…お前にこの家の行く末を託したいのだ。…優秀なお前にはそれが出来るはずだ」
「はい、旦那様。及ばずながら精一杯、ご期待に添えるよう努力いたします」
月城は緊張に頬を引き締め、端正な顔をやや紅潮させ、力強く頷いた。