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背徳のディスタンス
第1章 プロローグ

「……証拠、確保」

 そう言って、ぱしゃりとシャッター音が鳴った。
 奈々ははっとして、とっさに体を隠そうとする。乱れた着衣。スカートの下には脱ぎかけの下着。

「……やめて撮んないでっ」

 しーっと被さるようにたしなめられる。ようやく顎から望の手が離れた。

「何度言ったらわかるんですか? 聴こえちゃいますって」
「……ふざけないで。写メ、消しなさいっ」

 声のボリュームは抑え、仕事中の時のようにきつい口調でたしなめる。いつもならばすぐに謝ってくるはずの望は、やはり今日は強気だった。

「嫌ですよ。先輩がいやらしいことしてた証拠だし」
「……それで脅すつもり?」

 一瞬、考えるような間があった。

「そうですね。そうしたら、先輩俺の言いなりになるしかないですもんねー」

 奈々の顔が青ざめていく。体の火照りが冷めるにつれ、頭は冷静さを取り戻していった。
 もしばらされれば、確実にここにはいられない。

「……泣きそうな顔しちゃって。先輩のそんな顔初めて見ました。可愛い」
「……はあ!?」
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