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背徳のディスタンス
第5章 淫らな遊び

 部長の武内(たけうち)が奈々の異変に気付き、そう声をかけてきた。
 奈々はびくりと顔をあげ、望もちらりと奈々を見やる。
 武内は奈々の席まで歩いてきた。

(どうしよう……バレちゃう)

 ローターのついた下着をつけて感じていることが。
 パニックになりながらどうすることもできずに呆然とする奈々の横から、助け船を出したのは望だった。

「堀内先輩、今日ずっと体調悪かったみたいです」
「なんだって?」

 武内の視線は望へと移った。
 奈々はなるべく顔をふせ、息を潜めた。油断すると洩れてしまいそうになる吐息をかみ殺す。

「朝から無理をしてたのか? 風邪でも引いていたのか。今日はこのまま帰りなさい。あまり頑張りすぎてもよくない」

 武内の口調は優しかったが、奈々はショックを受けていた。ただでさえ生真面目な性格で、仕事に対しては特にそうな奈々。
 体調不良でもなんでもないのに、こんな理由で早退だなんて。
 だけど振動はずっと続いていて、奈々は限界だった。このまま会議に出席し続けるのは無理だ。

「ーーありがとう……ございます。すみません、今日はお先に……失礼します」

  小声でそれだけ言うので精一杯だった。
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