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新月の闇 満月の光
第4章 動き始める時間

「柚芽!! 誰を見てる!! 何を考えてる!! こっちを見ろっ! 」




真紘さんの荒ぶる声が、あたしを現実に引き戻す。




「あっ、真紘さん…………」


「俺以外を見るな……。お前は、俺のもんなんだろう? 」




怒りで震える声を聞いて、あたしは真紘さんの虚(うろ)のような瞳を覗き込む。


深い、深い緑色。


元々は、綺麗なエメラルドグリーン。


それなのに、今その瞳には深い闇が広がっていて、実は真紘さんが凄く普通に振る舞って見えたとしても、心を闇に蝕まれているのだと、改めて知らされた瞬間だった。




私は、ぐっと髪を掴まれて、仰ぎ見るあたし。




「柚芽、俺しか見るな……。俺以外を見るな……」




そしてあたしは、真紘さんから噛み付くような口付けを受けた。


彼の手が、あたしの身体を撫で回す。


引き裂かれて、飛び散ったボタン。


そのまま床に押し倒されて、愛撫もそこそこに私は真紘さんを受け入れた。


痛みを伴う快楽は、あたしをおかしくさせる。




「んっ……あっ……はあぁっ……あんっ………………」




痛みが快感に変わり、甘い疼きに変わる。


私の上で、美麗な顔を歪ませる貴方は、確実にあたしと共に快楽に堕ちているのに、泣いているように見えた。




「はあっ、結、芽…………」


「ああっ…あんっ…真っ、紘っ………」




ああっ、気持ち良い。


私は、真紘さんに、犯されているのに。


こんなに感じるなんて。


卑猥に響く水音が、打ち合う肌の音が。


不協和音を奏でて、部屋を舞う。


愛の無いsex。


なのに、気持ち良い。


愛の無いsex。


なのに、愛を感じるのは、何故。


本当に、其処に愛は無い?


私は、一度だけ、その行為に想いを伝えて見る。


私は、少しでもあなたに愛されていますか?


教えて。


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