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Vesica Pisces
第17章 太陽は静寂に交わる
伽耶が教えてくれた。

言葉にしなければ伝わらないこと。

あの大丈夫に、そんな気持ちが込められていたなんて。

出て行くタイミングを完全に見失って、出入り口で二人の会話に聞き入っていた。

自分でもうろ覚えな幼い頃の記憶。

猛や薫に出来ることは自分にも出来るなんて高を括って、毎日傷だらけになりながらも追い掛けるのに必死だった。

でも、カッコ悪い思い出話はもういいって。

「勝手に盛り上がってんじゃねーよ」

二人の間に割り入って座ると、伽耶の瞳が心なしか泳いでいる気がした。

ちらっと薫をみると、薫特有の敵を作らないどころか慈愛に満ちた笑顔がある。

あーコレか。

「お前も懲りねーやつ」

何がと首を傾げるけれど、また思い出させるのも癪でそれ以上突っ込みはしなかった。

今の今で薫に対する気持ちの変化に態度が付いていくわけもなく、いつも通りの憎まれ口と、過保護なまでの気持ちの鬱陶しさをかんじなごら、それでもいつもよりかは話しが弾んだ気がする。

薫はまた明日と言って、退院後の夕食も約束を取り付けて帰って行った。

伽耶は終始ご機嫌で、笑顔を浮かべながら隣で薫を見送った。
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