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Vesica Pisces
第3章 太陽は静寂を揺する
透に背後から腕を回し、頬を擦り寄せる女の子。

小さな顔にぱっちりした瞳、ふんわりと巻かれた見事なブロンド。

『トールの友達?』

『まあ、そんなとこ』

険しかった表情は和らいで、彼女と親しげに会話をしている。

その姿は…さっきよりずっと見たくないものだった。

和可菜と顔を見合わせると、そっと画面から外れた。

画面の向こうでは彼女の他にも男の子も女の子も居て、こちらもごちゃ混ぜでひたすら盛り上がった。

「出遅れた〜」

ひょっこり現れた嘉登は当たり前の様に冷蔵庫から缶ビールを取り出し、遠巻きに缶ビールを掲げて祝うと前を通り過ぎて、当然の如く伽耶の隣に座った。

「はぁ〜疲れた」

“お疲れさまです”

「録画であれだけ盛り上がれるほうが凄ぇわ」

透のレースは昨日のもので、透らは祝勝会の真っ最中という状況をやっと呑み込む。

“みんなライダーなんですか?”

嘉登は画面を確かめてから、スタッフの方が多いと教えてくれた。

あの女の子もスタッフの一人だろうか。

「伽耶ちゃん、ほらもうちょいこっち」

嘉登に言われてスマホのカメラに笑顔を向け、撮った写真を何処かに送っているらしい。

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