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禁煙チュウ
第8章 はじめて その1
「石井が、好きだ」
そう告げた途端、石井の目に涙が膨れ上がってぽろりと零れた。
ぎゅっと心臓を掴まれたような心地になる。

「石井……」
零れた涙を掬うように指で頬を撫でると、石井がピクリと震えた。
涙に濡れた睫毛がパチパチ羽ばたくように動く。
みるみる頬が上気していく。

あら……なんかウブな反応。
ちょっと俺は調子に乗る。

ぎゅっと目を閉じて手で顔を隠し、体を横向けてしまう石井に合わせて横に寝転ぶ。
「石井」
再び呼びかけて、顔を隠す手をのけて顔を覗き込む。
頬にかかった髪を指で耳にかける。
耳に指が触れた時も、石井はきゅっと肩をすくめて反応した。

可愛い。可愛い可愛い可愛い。
胸が甘く溶ける。
「くそ可愛いんですが……」

俺はもう我慢できなくなって、石井の首の下に片腕を滑り込ませると華奢な肩を引き寄せぎゅっと抱きしめた。
温かい布団の中で体がくっつきあう。
石井がおでこを俺の胸に擦り付ける。
ふわっと髪の匂い。
な~んで煙草と酒の匂いのする店で働いたあとなのに良い匂いがするんですかねぇ。

ゆっくり髪を撫で、くしゃりとまとめて耳を握る。
くい、と合図のように上に軽く引っ張ると、石井が顔を上げた。

至近距離で見つめ合う。
涙に濡れた目に吸い寄せられるように、唇を重ねた。

いつもと逆だな、と頭の片隅で思った。
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