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17歳の寄り道
第9章 【村上編】化学教師、村上浩輔
生徒を抱いてしまった。


子供だと思っていた生徒は、確実に女だった。
17歳の、一時の気まぐれに乗るなんて、どうかしていた。


どうして見守れなかったのだろう。

どうして俺は、こんなに情けないのだろう。


――白川の、迷子のような不安げな瞳は、詩織に似ていた。


夏が終われば、研究所に戻れる。
最初は嫌でたまらなかった教員生活も、終わるとなると寂しいものだ。

抱いた生徒は、別れた妻に似ていた。
一見大人しく見えるが、色気のある眼差しですっと俺の心を支配し翻弄する。そして、ひどい淋しがり屋。

別れた妻の名前は、詩織といった。


詩織は、俺が勤めていた研究所の事務員だった。
今ではどこでどうしているのかもわからない。俺に気を使って、所のメンバーも詩織の話はしない。

子供はいないまま離婚した。

結婚したのは27の年、詩織は24歳だった。
2年ほど付き合い、結婚したがる彼女に断る理由もなく、むしろ愛しさを覚えながら籍を入れた。

結婚してすぐ、詩織は子供を欲しがっていたが、俺はまだいいと思っていた。
その頃俺は臨時教員となり、仕事が忙しかったからだ。

結婚と共に仕事を辞めた詩織だったが、近所のパートなどを見つけてきては、ちょこちょこと働いていた。俺は仕事の忙しさにかまけて、彼女の事を放ったらかしだった。

週に数回愛し合っても、どこか物足りなさそうな彼女に気付いてはいたが、朝になるといつも通りだし、特段不満もなく、仲よく過ごしているのだと思っていた。

そうして、3年ほど経った頃。
「子供を作ろうか」と、詩織に話した。

待たせて悪かった。
でもまだ、俺は30になったばかりだし、詩織も20代。
当然、詩織は喜ぶものだと思った。
あんなに俺との子供をほしがっていたのだから。

しかし、彼女の表情は、想像していたものとは違っていた。
気まずそうに俯き、両手は膝の上でぎゅっと握っている。

「子供、ほしくない?」

黙りこくる彼女に、純粋に問いかけた。すると、大きな瞳から、涙の粒が落ちた。
詩織は、「好きな人がいる」と、俺に泣きながら打ち明けた。
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