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17歳の寄り道
第5章 【碧編】ファザー・コンプレックス
家に入ると、義父が玄関に立っていた。

「あ、た、ただいま、お義父さん…」
「おかえり。今の男の子は誰?」

――見てたんだ、お義父さん…

「家の前で、うるさかった?ごめんね。あの子は、と、友達だよ」

私が嘘を吐こうとしているのは明らかだったようで、義父は短くため息をついた。

ああ、言われる。
また、卑猥な事を言われる。

こわい、

ぎゅっと目をつぶって、次の言葉を待ち構えていると、義父は何も言わずに居間に戻って行った。



程無くして、凛太と母が帰ってきた。

「急いでご飯作るからね、碧、凛太をお風呂入れてやって」

洗面所で母が、手を洗う前の凛太の服を慌ただしく脱がせて、私に手招きをした。

「あおいちゃん、はいろ~っ」
「うん、入ろっか」

無邪気な凛太の前で制服、下着を脱ぎ、洗面スペース内を隅々まで見回した。
義父に見つからない、下着を隠せる場所。苦肉の策で、洗濯機と壁の間に丸めたショーツを埋め込むように隠した。

凛太は不思議そうな顔をしていたが、ここは仕方ない。
その後二人で浴室に入り、自分の身体を洗いながら凛太の身体を洗ってやった。

「凛太、数数えてー」
「いーち、にーい、さーん、よーん、・・・」

10まで数えたら出る約束。

二人で温かいお湯に浸かり、ふうーと至福のため息をつく。何気なくドアを見たら、すりガラス越しに動く人影が見えた。
……吐き気がした。


毎日ではないが、週に何度かは義父はやっぱり洗面所に来ている。
何かが変?という淡い違和感は、日に日に確信と変わってゆく。
使用済みのショーツと脱いだブラジャーさえ見られなければ、後は目を瞑ることにした。

ひどい嫌悪感に苛まれながら、凛太には笑顔を見せてお風呂から上がる。
凛太が歌っている、保育園で覚えてきた歌が、私の眉間の皺を取り除いてくれた。

そうだ。
凛太もいるのに、義父は何を考えているんだろう…


母の幸せと、凛太の幸せを守りたい。
だけど、私の幸せは誰が守ってくれるんだろう?

凛太が居間に走って行ったのを見送り、洗濯機と壁の隙間に挟み込んでいた使用済みショーツを引き出し、私は自分の役割である洗濯を始めたのだった。
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