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篠突く - 禁断の果実 -
第3章 本編三話 悪事千里を走る
「委員長、これどういうこと? 孝哉……って、倉橋孝哉のことだよね。委員長の弟の、生徒会長」

 私はクラス委員長だった。そして弟の孝哉は我が校の生徒会長だった。自宅ではかけない赤縁の眼鏡の先で、風紀委員の男子生徒がボイスレコーダーを持て余している。
 昼休みを迎えたクラスは緊迫した空気に包まれていた。清楚で美人と言われている委員長にあるまじき行為を知って、そうなるのも無理はない。
 ――……やられた。あの部屋にいたのは、私と弟の他には林 紗絵だけだった。あの女は、会話を録音していたのだ。だから事実を伝えるべきではないと言ったのに。

「委員長さぁ……実の弟とセックスしたってこと?」

 クラスのリーダー的存在である河内という男子が、静まり返っていた空気を切り裂いた。髪を日本人には似合わぬ鈍い金色に染め、ワックスで必死にオールバックにしたような跡が窺える。ゴツいシルバーのネックレスを首からぶら下げ、ワイシャツの裾を出してスラックスはだらしなく腰で履いた、如何にも不良といった感じの生徒だ。風紀委員は、私が弟とセックスをしたかどうかより、この男を取り締まるべきだと思うのだが、腰抜けのような奴が彼を相手にできるとは思えない。私が女だからなめられているのだろう。
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