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ランジェリーの勇気
第1章 序



彼女はその原因を、自らの引っ込み思案な性格だと考えている。

心のなかでは色々な思いがあるというのに、それを上手に言葉にできない。もどかしい思いが募ると、つい、心にもないことをいってしまったりする。街の広告で「話し方教室」の案内を見ると、つい、読み込んでしまう。そこに描かれる「覚えがありませんか?」の箇条書きのどれもが、まるで自分のことをいっているかのように思える。



男性達が彼女に言い寄るのは、その引っ込み思案さを、奥ゆかしさだと思うからなのだ、と彼女は考えている。昔の日本映画に出てきた、言葉少なだが芯の強いおんな達。京美人やお嬢様などの先入観を持った彼らは、彼女を手に入れることに夢中になり、そして手に入れた後は、そのあっけなさに閉口してしまう。閉口した後は、彼女に隠れて別の女性を追い求めることになる。

彼女自身は、手に入れられるまでの間の彼らの本当に熱心な求愛にすっかりほだされてしまい、彼らの後から熱を上げるタイプだ。そして彼女の熱が熟した頃には、彼らはそっと、彼女から離れてゆく。



自分は多くを望んだわけではない、と思う。身の丈にあった、つつましい人生が得られれば、それで特に文句はない、と彼女は考える。しかし、と時折してしまう自慰の後に、彼女はひえびえとした心で思う。多くを望んだわけではないが、どうしてこう、自分にピッタリのパートナーが現れないのだろうか、と。




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