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サキュバスちゃんの純情《長編》
第11章 幸福な降伏
「水森さんは、吸血鬼の人が好きだったんですよね?」
「まさか!」
「いやいや、どう聞いても、お兄様より自分を選んで欲しかったと言っているようにしか聞こえませんけど」
「……本当に?」
「本当に」
口に手を当て、水森さんは唸る。
何なんだ、この人。まさか、自分の気持ちに気づいていなかったのか?
「……はぁ。研究対象として、被験者として物足りないとは感じていましたが、好意があったからだったとは……意外でした」
私も意外でした。水森さんがこんなに自分の気持ちに鈍感だったとは。精神科医として、他人の気持ちは理解でき、寄り添うことはできるのかもしれないけれど、まさか、ねぇ。
溜め息をついたあとで、水森さんが私を見つめる。
「では、僕があなたに抱いている物足りなさも、やはり好意なのでしょうか?」
だから、それを私に聞かないでください!
物足りない、なんて思っていたんですか!?
そんなの、知りませんよ! もう!
「湯川先生やお兄様と自分を比べて、手に入れられなかったから、拗ねているようにも見えますけど?」
「うぅん……なるほど」
「水森さんは私が好きなんですか?」
水森さんの目が泳ぐ。眼鏡をかけていない分、彼の目の動きがよく見える。動揺、しているようだ。
「興味があるとは言われましたけど、それは好意なんですか?」
「……」
「私に触れたいんですか? キスしたいんですか?」
「……」
「私と、セックスしてみたいんですか?」