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サキュバスちゃんの純情《長編》
第12章 性欲か生欲か

 朝、キングサイズのダブルベッドの真ん中で目が覚めた。
 溢れていた涙を拭おうとして、両手に暖かいものが重なっていることに気づく。左右を見ると、全裸の湯川先生と翔吾くんが、それぞれ私と手を繋いだ状態で眠っていた。
 隣にいるのが叡心先生でなくても、いい。こんなことでさえ、嬉しい。幸せに思えてしまう。

 結局、昨夜はお風呂から出たあと、二人は酒盛りを始めてしまって潰れたのだ。私は飲まずに二人に付き合ったのだけれど、前回と違い、酒盛りのあとのセックスはなかった。
 さすがに三人でのプレイを三連続は体力的に厳しかったので、私はありがたく眠らせてもらった。

 二人を起こさないようにゆっくりと手を外し、ベッドから抜け出してカーテンを開けると、台風が通り過ぎてもなお曇ったままの薄い灰色の世界が広がっていた。
 テラスは水捌けがいいのか、少し濡れているだけだ。スリッパを出して、テラスの手すりから景色を眺める。
 雲がものすごい速さで流れていく。濃い灰色の雲が西の空に見える。まだ台風の影響で雨が降るのかもしれない。
 酒盛りの間、外では木々の葉が擦れる音が騒がしく、風が強く吹き荒び、どこかでバケツが転がる音が聞こえていたのだけれど、二人は全く気にしていなかった。
 私はそんな二人の話を聞きながら、昨日は一人ではなくて良かったのかもしれないと思う。一人でいたら、突発的な衝動で、また海に飛び込んでいたかもしれない。

 二人がいて、良かった。
 二人といて、本当に良かった。

 尾道に二人が来てくれたから、叡心先生が夢に出てきてくれたのかもしれない。
 たぶん、そうだ。二人がいたから、叡心先生が出てきたんだ。今まで、こんなことなかったから。
 叡心先生が二人を認めてくれたのだとしたら、本当に嬉しい。
 目の前は灰色の世界だけれど、私の心には光が差している。

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