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ただ、口づけに愛を込めて
第2章 (第一部) 出会い

夜、私は部屋の窓から前の高いマンションを見上げる。グリーンシティの一角、あいつが住むのは最上階。
「もうすぐ、毎日会えなくなるね…」
まるで、自分以外誰もいない、何もない枯野に取り残されたような。
ずっとこうかもしれない。
転校生に全く興味を示さなかった西野。
話すととても楽しくて、寒いギャグを得意げに披露して。その度に寒〜というのは私だった。覚えてる。
5年生のとき、休み時間に私が落としたヘアゴムを図書室まで運んできてくれたよね。素直にありがとうって言えなくて…ごめんね。
鎌倉に行くとき、ホームで電車が入ってきて、西野が被ってた帽子がするっと綺麗にホームの下に吸い込まれたよね。でもお兄さんの帽子も持ってて、事無きを得たんだっけ。ほんと運が良いんだから。
友達のお母さんがね、桜弥ちゃんは良いね、イケメンくんと一緒の班で。って言ってたよ。西野イケメンだって。私一度も思ったことなかったけど、西野を好きな女子、確かに多かったね。お前は誰にも興味を示してなかったけど。
合判の結果、教えてくれてありがとうね。
普段慎重なお前が、いくら嬉しかったとはいえ榮成の合格可能性を教えてくれるなんて、今考えたら信頼してくれてたんだろうな。
修学旅行から帰って塾に行くとき、偶然一緒の電車になったね。他のみんななら女子と一緒は嫌がるのに、お前は算数の勉強しながら一緒に行ってくれて。勉強するなら1人の方が良いのに。ありがとう。
お前は照れると視線をそらしたり、顔を背けたり、口を隠したりするよね。癖なのかな。
誰かが争ってるとき、お前はまず場を見定めるよね。どういう風に転がるか。そして、決して口を出さないで傍観者を決め込んで。すぐ口を挟んで仲裁しにいく私とは違って。そういうところは好きじゃないけどね。
でも、それを含めてお前が好きだよ。
何故か恥ずかしくなる。西野はなんでも話せる奴で、しょっちゅうふざけてからかって。
そして、いつも私は笑顔だった。
毎日会える日はもうすぐ終わる。
同窓会までもう会えないかもしれない。
胸が張り裂けそうって、こういうことをいうんだろう。
西野の住むマンションを見る。
目を瞑って。
窓ガラス越しに口づける。
誰よりも、大好きだよ…廉。
卒業式まで、あと一ヶ月しかない。
「もうすぐ、毎日会えなくなるね…」
まるで、自分以外誰もいない、何もない枯野に取り残されたような。
ずっとこうかもしれない。
転校生に全く興味を示さなかった西野。
話すととても楽しくて、寒いギャグを得意げに披露して。その度に寒〜というのは私だった。覚えてる。
5年生のとき、休み時間に私が落としたヘアゴムを図書室まで運んできてくれたよね。素直にありがとうって言えなくて…ごめんね。
鎌倉に行くとき、ホームで電車が入ってきて、西野が被ってた帽子がするっと綺麗にホームの下に吸い込まれたよね。でもお兄さんの帽子も持ってて、事無きを得たんだっけ。ほんと運が良いんだから。
友達のお母さんがね、桜弥ちゃんは良いね、イケメンくんと一緒の班で。って言ってたよ。西野イケメンだって。私一度も思ったことなかったけど、西野を好きな女子、確かに多かったね。お前は誰にも興味を示してなかったけど。
合判の結果、教えてくれてありがとうね。
普段慎重なお前が、いくら嬉しかったとはいえ榮成の合格可能性を教えてくれるなんて、今考えたら信頼してくれてたんだろうな。
修学旅行から帰って塾に行くとき、偶然一緒の電車になったね。他のみんななら女子と一緒は嫌がるのに、お前は算数の勉強しながら一緒に行ってくれて。勉強するなら1人の方が良いのに。ありがとう。
お前は照れると視線をそらしたり、顔を背けたり、口を隠したりするよね。癖なのかな。
誰かが争ってるとき、お前はまず場を見定めるよね。どういう風に転がるか。そして、決して口を出さないで傍観者を決め込んで。すぐ口を挟んで仲裁しにいく私とは違って。そういうところは好きじゃないけどね。
でも、それを含めてお前が好きだよ。
何故か恥ずかしくなる。西野はなんでも話せる奴で、しょっちゅうふざけてからかって。
そして、いつも私は笑顔だった。
毎日会える日はもうすぐ終わる。
同窓会までもう会えないかもしれない。
胸が張り裂けそうって、こういうことをいうんだろう。
西野の住むマンションを見る。
目を瞑って。
窓ガラス越しに口づける。
誰よりも、大好きだよ…廉。
卒業式まで、あと一ヶ月しかない。

