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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第10章 身寄り
【1】
秋の晴れた空は夏より少し色褪せて、けれどその分だけは日中も過ごしやすくなった。庭から見える雲海の雲も、その形をすっかり秋のものに変えていた。
そして衣も日に寄っては厚さを変え、夜は特に、体を冷やさないようにと余分に一枚打ち掛けを与えられるような、そんな頃──。
神依は鼠軼と鼠英、そして蜘蛛の女神を傍らに、柔らかい日差しが当たる縁側でせっせと手を動かし、綿花から種を取り除く作業をしていた。
「糸ってこんな植物からできるんですね。……私にちゃんと、紡げるかなあ」
「なに、ここにはこと糸の扱いに長けた蜘蛛の神がおる。千切れたら繋いでくれると申しておるから百人力じゃ。きっと丈夫な、良き糸ができるじゃろ」
「わ、ありがとうございます。それなら失敗しても大丈夫ですね」
「そうじゃな。ああ、もし楽しめれば、蚕を飼うのもいいかもしれん」
「かいこ?」
そんなふうに、小さな神々は珍しく巫女らしい姿を見せる家主を見守り、のどかに語らう。それは季節に違わぬ穏やかな時間だった。
そこへ童がとたとたと駆けてくる。
「神依様ー。お湯沸かしたから少し休憩しないかって、一ノ兄が」
「ありがとう。──禊ー、ちょっと待っててー、あと少しなの!」
秋の晴れた空は夏より少し色褪せて、けれどその分だけは日中も過ごしやすくなった。庭から見える雲海の雲も、その形をすっかり秋のものに変えていた。
そして衣も日に寄っては厚さを変え、夜は特に、体を冷やさないようにと余分に一枚打ち掛けを与えられるような、そんな頃──。
神依は鼠軼と鼠英、そして蜘蛛の女神を傍らに、柔らかい日差しが当たる縁側でせっせと手を動かし、綿花から種を取り除く作業をしていた。
「糸ってこんな植物からできるんですね。……私にちゃんと、紡げるかなあ」
「なに、ここにはこと糸の扱いに長けた蜘蛛の神がおる。千切れたら繋いでくれると申しておるから百人力じゃ。きっと丈夫な、良き糸ができるじゃろ」
「わ、ありがとうございます。それなら失敗しても大丈夫ですね」
「そうじゃな。ああ、もし楽しめれば、蚕を飼うのもいいかもしれん」
「かいこ?」
そんなふうに、小さな神々は珍しく巫女らしい姿を見せる家主を見守り、のどかに語らう。それは季節に違わぬ穏やかな時間だった。
そこへ童がとたとたと駆けてくる。
「神依様ー。お湯沸かしたから少し休憩しないかって、一ノ兄が」
「ありがとう。──禊ー、ちょっと待っててー、あと少しなの!」