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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第2章 神隠しの行く末
(……神依)
あれは神依(みより)だ。水霊に猿彦、自身と一度に三柱の神を引き寄せた。神が依る存在。
 ここに来る前に余程なにかに未練を持たれていたのか、求められていたのか、愛されていたのか。いずれにしてもその質が善ならば祈りが、悪ならば呪いが寄せられている。そしてそれが消えるまで、その異質なたちは続く。
 「──なあ孫……、お前」
何かを考えるように一方を見つめ続ける日嗣に、猿彦が声を掛ける。
「……変な勘繰りはするな。最後まではしていない」
「ああ、うん──そうだよな。でも、……まあ、いい子だったな。だからお前も助けたんだろ? あのままじゃ色狂いになるか、肩から膿んで死ぬかのどっちかだ。だから──」
「その話はもういい。俺はもう、誰かに心を寄せたりはしない。──行くぞ」
 友の言葉に、猿彦は返事代わりに溜め息を一つ吐いて腰の羽扇を取りそれを振るう。
 すると一陣の鋭い風が白壁を木の葉のように飛び散らせ、その先に天へと突き抜ける長い長い階段の姿を現した。
 二人がそこに足を踏み入れれば、洞は再び元通りに閉ざされる。
 そして後にはいつも通り、潮騒が白と青の空間に反響するのみとなった。

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