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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第16章 白日の下
【1】

 その日の空は、薄い水の色をしていた。
 空も、雲海も、布越しの光のような淡い雲をうっすらと湛え、どこかからひとつふたつと雪が舞っている。
 雲海の上を光と影が滑り、その雪の粒は光の中いっそう白く輝いて波間に溶けていく。静かな日だった。

***

 そしてそれは神依達の住む小島も変わらず──この季節になっても未だ緑葉を湛えたままの竹林には、葉擦れの音だけがさらさらと流れていた。
 そこに木霊し始める、トントンと木を叩く小気味好い音。
 その竹林の奥まった場所では、見物の神依と子龍、そして禊を伴って、何人かの匠達が小さな祠を造っていた。
 それは元々は童が中心となって行っていたことだったが、怪我が完治してからは禊の言い付けで働きに出て生活の流れを戻している。
 神依のことで童同士の関係も多少は変わるだろうが、慣れた仕事や環境を長い間失うと、その腕が劣化することも禊は知っていた。才ある弟の能力を衰えさせないよう、なるべく早く玉造の匠の元に戻した方が良いという配慮でもあったが、元より何かを造ることが好きだった童は家に居る間は自ら率先してこの匠達と土を盛り、石を積んで小石を流しては土台造りを進めてくれていた。
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