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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第3章 世界の理
「私が見た限り、“それらしき跡は何もございませんでした”。蛟の件もあり、こちらも直に目にし確認致しましたが──元より彼女は処女(おとめ)なれば。言葉で申し上げるより、今ならそれが一目で判じられる何よりの証になるかと存じます」
「いや……ならばよい」
きっぱりと言い切った禊に答えたのは、大兄ではなく洞主だった。自身の巫女の女陰を見せてもいいと、そうまで“禊”が言うならそれは事実。
「ならば巫女として迎える“初夜”も何ら障り無く参りましょうて。方々にはほんに感謝せねば。──ああ、もうよいぞ大弟」
「はい。失礼致します」
 そうして部屋を出ていく禊を見送り、再び二人だけになった空間で大兄が問う。
「よろしいのですか」
「構わぬ。それより私には……お前達禊の、見えぬ愛情の方が胸に刺さる時がある……。あの娘もそう──ならぬとよいが」
「……それが禊というものなれば」
それに寂しげに笑む玉衣に、大兄は加害者にも似た保護欲を感じる。
 未だあの禊を大弟と呼んでしまうように、大兄に取って彼女はいつまでも──玉衣だった。
 そしてそれこそが“禊”の業。
 報われずとも、叶わずとも。
 いつか一ノ兄もそうなるだろうと、大兄は閉められた戸をじっと見つめた。

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