この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 聖夜の恋人
天井の高く広々とした玄関ホールに、庭師が日光から切り出してきた樅木を下僕達が慎重に設置する。
普段静かな邸内が一斉に活気付く。
大きな樅木を見上げる暁の目が輝き出す。

暁はこの家に引き取られるまでクリスマスを知らなかった。もちろんクリスマスツリーも見たこともなかったのだ。
初めてクリスマスツリーを見た暁は青白い頬を紅潮させ、声も出ないほど驚いていた。
縣と二人でオーナメントを飾り付ける間も嬉しそうにはしゃぎ、笑った。
縣は暁を抱きかかえ脚立に乗り、樅木の一番天辺に大きな金の星のオーナメントを飾らせてやった。
「…兄さん…綺麗だね…」
星のオーナメントを見る暁のきらきら輝いた目と、上擦った声は今でも忘れられない。
この不遇だった健気な弟を思い切り抱きしめた記憶がある。

縣は優しく下僕達に指示を出す暁を見ながら、想いはやはり光に移っていった。
…来週はクリスマスか…。
光さんは、どうやって過ごすのだろうか…。
…見合いはいつなのだろうか…。
本当に、見合いをしてしまうのだろうか…。

いや、フロレアンをまだ愛している光さんがあっさりと見合いするとは思えない。
だが、もし光さんが本気だとしたら…。

…私が彼女の心の片隅にでも入り込む隙はあるのだろうか…。
縣は光のことを考えれば考えるほど不安になる。
…こんなにも自分を落ち着かない気持ちにさせるのは、光さんだけだ。
…だが、私が彼女に告白したところで、彼女を苦しめるだけなのではないか。
恋を諦め、家の為の結婚を選ぼうとしている彼女に…。
…いや、よそう。
縣は淋しく笑い、首を振る。
…彼女は私への感情を友情だと言ったのだ。
その彼女の気持ちをこれ以上掻き乱す必要はない。
…大人の私が出来ることは、彼女の幸せを祈ることだけだ…。
自分に言い聞かせるようにして窓の外をぼんやり見つめる縣に、暁が不安気に声をかける。
「…兄さん…」
縣は優しく弟を振り返り、心配するなと言うように笑ってみせた。

…と、その時。
「旦那様、只今北白川伯爵家の執事、月城氏がお見えになりました」
この家の執事、生田が告げに来た。
玄関を振り返る。
北白川伯爵家の美貌の執事、月城が黒の制服姿で見事なクリスマスローズを手に微笑んでいた。
「お約束なく伺いまして申し訳ありません。梨央様よりの少し早いクリスマスプレゼントをお持ちいたしました」


/133ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ