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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 16区の恋人
翌日になっても縣は戻らなかった。
…何かあったのだろうか。
情報収集は難航しているのだろうか。
縣さんは大丈夫なのだろうか。
光の胸は心配に押しつぶされそうになる。

夕方になっても何の連絡もない。
我慢しきれなくなった光は、直接領事館に赴く決意を固め、外出の準備をし階下に降りた。
アンヌに運転手の手配を頼もうとしたその時、表の車寄せに車が止まる音が聞こえた。
光は玄関の扉を素早く開ける。
そこには憔悴しきった縣の姿があった。
「縣さん!」
身嗜みの良いいつもお洒落な縣の姿とは別人のような疲れきった姿があった。
髪は乱れ、シャツのボタンは外されている。
しかし、光の顔を見ると安心させるように頷いた。
「…連絡できなくてすまなかったね…」
光は激しく首を振る。
「いいの、そんなこと。大丈夫なの?縣さん」
玄関に入る縣の足元が少しふらついた。
光は縣の身体を抱きしめるように支えた。
「縣さん!」
縣は弱々しく呟いた。
「…炭鉱の村落は従業員の住まいに壊滅的な被害があったらしい。…一帯の長屋が全て土砂に埋まってしまった…」
光は眼を見張る。
「…全てだ…大人も子供も…全て…」
縣の端正な顔が苦痛に歪む。
「…私のせいだ…」
「なぜ⁉︎台風は天災よ。貴方のせいではないわ!」
光は叫ぶ。
縣は光に支えられながら、ふらふらと階段を登りながら呟く。
「…私のせいなのだ。…あの一帯は崖に面していて水捌けも悪かった。以前から住居の移転を検討していたのだ。…だが、炭鉱現場の設備投資を先にするよう現場監督からの要望があって…住居移転を後回しにしてしまったんだ…」
縣の手が階段の手すりを強く握る。
「…私が…移転を後回しにせず早急に対処していたら…従業員や家族たちは死なずに済んだのに!」
縣は拳を壁に強く何度もぶつけた。
光は縣の手を握りしめる。
「止めて!貴方のせいなんかじゃない!貴方は悪くない!仕方のないことだわ!誰も悪くない!」
思わず抱きしめた縣の身体は小刻みに震えていた。
こんな弱々しい縣は初めて見る。
光が知る縣はいつも自信に満ち溢れ余裕があり、常に堂々としていた。
今の縣はまるで傷ついた少年のように不安と後悔で打ち震えていた。
光の中で縣への母性が溢れ、堪らずに強く抱きしめる。
「貴方は悪くない!自分を責めないで!お願いだから…」
光の腕の中で縣が弱々しい眼差しを向けた。
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