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背徳の主
第5章 彩乃
彩乃はオフィスのドアを閉め、「Night Life」の店内に向かった。

「彩乃、今晩は私の所に泊まれ。」

東城( 店長 )の誘いは、彩乃の心をときめかせる。

何時からか、東城に抱かれる度に心の安らぎを覚え、自分にとって欠かせない存在となった。

東城と知り合ったのは3年前

当時私は多重債務を抱えていた。

1年前、合コンで知り合った男と結婚を前提に交際を始めた。

結婚が前提条件のため、男に言われるまま早々に肉体関係に嵌まった。

男は新規事業の立ち上げで資金の必要性を訴えてきた。

彩乃は給料の大半を渡したが更に頼まれて、結局サラ金4社と街金に総額600万円の借金ができた。

彩乃がサラ金や街金の返済の催促を受け始めた頃、男は姿を消した?

結局1年間、彩乃は金と体を男に貢ぎ続けただけ。

借金の催促は彩乃の勤務先にも及び、結局辞めざる得なかた。

毎日のように各金融会社から取り立てや催促の電話や訪問がくる。

怖かった。

死のうかとも思った。



ある日彩乃はアパートを出て街をさまよう。

駅前の商店街を歩き、何気無くパチンコ店に入った。

彩乃はパチンコを知らなかった。

端の台に座り、隣のおじさんの打ち方を観ていた。

財布から千円を取り出し台に入れた。

ボタンを押すと玉が払い出され、ハンドルを回して玉を打つ。

台は何も反応しない。

玉が上皿から無くなり、再度ボタンを押して払い出す。

突然、隣のおじさんが

「お姉さん、パチンコは初めてかな?」

彩乃はおじさんに向かって頷く。

「ここを狙ってハンドルを回して、玉をここに入れるとデジタルが回る。」

言われるままにハンドルを回して狙うと、やっとチャッカ―に玉が入り、デジタルが回った。

上皿に玉が無くなり、ボタンを押しても玉が出ない。

「お姉さん、お金が無くなったから、補充しないと。」

財布を開けて千円を出そうとした時、2千円しかなかった。

これが今の彩乃の全財産に気がついた。

彩乃は急に涙が出てきた。

情けなくてどうしようもなかった。

隣のおじさんが中断して声を掛けてきた。

「お姉さん、どうした?」

彩乃は泣きじゃくりながら

「おじさん、今日、私を買ってくれませんか? もう全財産がこれだけなんで。」

彩乃は涙を流しながら、笑って財布の中をおじさんに見せた。

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