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愛憎
第2章 再会と過去
「川中誠です。17番の高橋萌とは同中で、吹奏楽部にいました。
よろしくお願いします。」

その自己紹介をしている時、何故か澤村先生の目が潤んでいるような気がした。

(???)

誠の自己紹介が終わった後、澤村先生は目を拭う。

(やっぱり、先生、泣きそうになってた。…そう言えば私も見た事ある…)

一通り自己紹介が終わった時にチャイム音が流れた。


「じゃ、これで今日は解散かな〜」


出席番号1番の子に号令をして…と指示し、挨拶したあと、澤村先生は

「川中くんと高橋さん。ちょっと残ってね」
と引き止めた。


(えっ?なんで残るんだろう、私たち…)


ハテナマークでいるが、先生がそう指示する手前残らざる得ない。


教室には、澤村先生、誠、萌の三人が残った。

「ホント、萌ちゃん、まこちゃん、久しぶり。
こんなに大人になってぇ〜」


と、二人を同時に抱き締めた。


「「えっ!?」」

萌と誠は澤村先生に驚きの声をあげた。

「え〜?覚えてないの〜?まさか、担任になっちゃうとは思わなかったけど、私、まこちゃんが入院してた時の担当看護師さん♪」

「ゆうちゃん〜?!」

と、驚きの声を誠があげた。

「はい♪旧姓渡辺ゆうです♪」

もーう。退院してから一度も来ないなんて、薄情者〜とゆうは言いながら、

遠い目をして

「学校の授業に遅れたくないからって、健気に院内教室通ったり、私に色々質問してね。
まこちゃんの、そんな姿見て、なんか目覚めちゃったんだ。」

萌はそのゆうの遠い目をした顔を見て

『萌ちゃん、ごめんね。
まこちゃん、萌ちゃんのお父さんと同じ無菌室に入っちゃって、今遊べないんだ。』

申し訳なさそうに、まだ5歳だった萌に言ったナースキャップを被った看護師さんを思い出した。


「あぁぁぁ〜!!!思い出した!!ゆうちゃんだぁ〜!!」

誠はそんな萌に

「おっせぇ!萌!」
と声を上げる。

澤村先生はそんな萌に

「ふふふ、やっと思い出してくれたのね。嬉しいわ〜」

澤村先生は萌を抱き締める。


(私としたことがゆうちゃんの顔を忘れるなんて…。)


澤村先生は、萌にとって、憧れの存在であり、夢を追い掛ける事になった原点だった人だったからである。

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