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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第3章 ルール

それでも彼女がピンときたのは

第三者から見たら理想の彼氏に違いない相手と、その時間、デートよりも幸せな " お出掛け " をしていたからだ。

「それ、たぶんお兄ちゃん」

「え! お兄ちゃん?」

「昨日はお兄ちゃんとスーパーに行ったの」

返事をする花菜の口調は素っ気ない。

彼女からしたら、伊月と一緒にいるところを同級生に見られたこと自体が面白くなかった。

彼女にとっての伊月は…伊月と暮らすあの街は──五月蝿い都会から逃げ込むためのオアシスであり、誰にも犯されたくない神聖なものだ。

そもそも高校から伊月の下宿先まで遠いのに

どうして同級生があの場所にいたのだろう。

「…誰が見たの?」

「ももがさ~、ほら、1組のもも! 弁当の時にみんなに言いふらしてたよ? あのへんに最近できたばっかのカフェあるじゃん。それ目当てで行ったら、たまたま鈴村さんを見かけたんだって」

もも、なんてありふれた名前を告げられても困るのだが、つまりはあの辺りにも高校の知り合い達が出没するらしい。

花菜にとって残念な情報が手に入った。

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