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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第4章 発芽

腰を打ち付けていた男子生徒が、花菜を見つけて止まった。

花菜は何ひとつ声を出せず目を見開いて固まっている。

床で打った尻が痛むも、気にする余裕はない。

「…あんっ……え、ハァっ、ちょっとぉ……!! なンなのよ、あの子」

「知らない」

「ハァっ…ハァっ、最悪」

花菜の視線は言ってしまえば不躾(ブシツケ)なもので(急なことに頭が真っ白でそらせなかっただけだが)、それを向けられる二人は顔をしかめた。

興が冷めたのだろう。

行為は中断され、女生徒は男を押し退けフェンスに寄りかかり、服の乱れを直し始めた。

「何のために早起きしたと思ってるのよぉ」

「あいつを追い出せばいいんだろう?」

「いいわよ…っ、もう」

女が悪態をついている。

甘い雰囲気も、終わりのキスもない。

だが足元はまだふらついているみたいで

あっけなく終わった交わりの熱を逃がすように、彼女はブラウスの胸元をパタパタとあおっていた。

そして、赤く塗られた唇をツンと立てたまま屋上を去ってしまった。



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