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それを、口にすれば
第6章 気持ちが、あるから
「お前の作る飯はどうも所帯じみてるなあ」

「え……?」

月曜の朝。
夫との一日ぶりの朝食の時間に、初めに言われた台詞がそれだった。

テーブルの上を見つめると、そこに並べられているのは鯵の干物、卵焼き、頭髪を気にしている良介のための海藻をのせたサラダ。
そして毎回出汁を取って作る味噌汁も並んでいる。

和食が好きな良介に合わせ、結婚当初から朝食はずっと純和風だった。
いや、パンが好きな優雨が一度だけトーストを出した時もあったが……虫の居所が悪かったのだろうか。
良介はパンの乗った皿をひっくり返した。

まだ優雨が小さかった頃、父親に連れられて入った喫茶店で食べたことのあるバターたっぷりの厚切りトースト。
それをふと思い出し、大切な思い出を夫とも共有したくてワクワクしながら準備した朝食……。

それが、テーブルクロスの上に転がり、バターの染みを作っていく。

『こんなギトギトしたもん出しやがって、俺がデブになって早死にすればいいと思ってるんだろう』

今思えば、良介は前日に食の欧米化などを扱うテレビを見て影響を受けたのかもしれない。
しかしあの頃はまだ訳も分からず、優雨は涙を堪えながらひっくり返ったトーストをただ見つめていた。

今思えば、あの頃から良介とのすれ違いを感じ始めたのかもしれない……。
優雨がパンを出したのはその一度きりだった。
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