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それを、口にすれば
第8章 空を駆ける言葉
生理が来たことだって……報告しても、きっと意味がないだろう。
「ほらみろ」と得意げな顔をされるのは目に見えている。

それにしても、理沙子とこんなに頻繁に会って、二人は一体どんな風に過ごしているのだろうか。

家族よりも、仕事よりも大切なこと。

今の良介にとって、生活の中心は理沙子なのではないかと思う。
夢中になっているのは理沙子に対してなのか、理沙子とのセックスに対してなのか……。

セックスに溺れるとはどういうことだろう。
自分はまだ溺れたことなどない。

と、そこまで考えたところで、結城の顔が浮かんだ。

(生理のこと、結城さんにはメールで伝えよう。もう飛行機に乗っているのかもしれないけど……きっと気にしてくれている気がする)

週末にはまた結城に会えるのだ。
そう思うと、心の一部に情欲の仄かなあかりが灯る。

自分もセックスに溺れることができるだろうか?
嫌なことや、無神経な夫のことなど全て忘れ……愛する人の腕の中で。

人妻なのに……と、強い倫理観がまた顔を覗かせるが、結城を求める気持ちはもうそれを超えていた。

結城に会いたい、溺れるほど抱かれてみたいと……優雨は思った。






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