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恋いろ神代記~神語の細~
第2章 桂楫
 閉じられた襖と共に訪れる静けさに、邑の日常の音が薄く混ざる。ぬくもりのある静寂。吹く風にざあと草木が揺れ、その乾いた葉擦れの音を合図に童達は再び視線を庭に戻した。
 「なんか、不思議だよな」
「え?」
「俺達がまたこうやって話すの。お前の巫女さんと、神依様も。俺、月読様はあんまり得意じゃないけど、もしかしたら──なんて思っちゃうんだよなあ」
「……そうだね、最初は祟りの話から始まったのに──僕達には、稀なことばかりだ」
「そういえばあの頃は、すっげえしんどそうな顔してたもんな」
「いや……今は君の方が、見た目は心配なんだけどね」
「確かに、このでかい眼帯はなあ。でも傷が見えると、神依様が悲しそうな顔するし……」
 しばらくすると、途切れ途切れに何かしらの美しい楽の音と、調子っぱずれの楽ならぬ音の飛沫が交互に聞こえ始める。
 果たして主にそんな才があるのかやや疑わしく思う童に、音が出るだけまだいいと九ノ弟が笑う。
「あれから、僕と九ノ兄も習ったんだ。優沙様は種類を選ばないから僕も一通り手をつけてみたけど、抜きん出た才はなかったなあ。九ノ兄は笛をすごい練習して、相当上手くなったんだけど」
「そっかあ、頑張ったんだな。──ならさ」
「ん?」
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