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指先
第1章 思いがけない出来事
「ごめんー木下!この部品ないか探してきて?」

3階営業部の山岸さんが2階の事務に

顔を出すと同僚の女子がざわつく。

そして美人でもない私に部品を頼まれてる事に

睨まれる。

「何で 仕事できない奴 使うわけ?」

聞こえてきますよー大きな愚痴が。

私だって仕事上で使われてるだけなのに。

可愛カッコイイ山岸さんが来たわ♡って騒いでる。

自惚れてないよーでもこの距離で見れるのが

嬉しくて癒される瞬間もあるー。

「山岸さーん、私が行きましょうか?」

木下 加奈子の同僚の女が近寄る。

普段は加奈子に部品を取りに行かせているのに。

「小田さん、ありがとう、でも木下に頼んだから。」

山岸ファンの女子は加奈子に嫉妬の目で見ていた。

こわっ、そんな目で見ないで、仕事だし。

「ここで待っててもらえますか?」

「悪いな。」

加奈子は部品の在庫管理へ在庫室へ行った。

名札が古くなって足元に落ちた。


古くなったなー。

おっといけない、早く部品持っていこ。


あの頃は初々しかったな。

もう入社して5年。

寿退社で先月も一人辞めた。

同期は7人から3人に減った。

オフィス内は定時で上がり人が減り

気がつけば22時。

加奈子は1人デスクに残り、

パンフレットを修正していた。

急ぎの仕事と日常にこなす仕事もなんとか終わった。


早く帰って寝たい…。

加奈子は一人残されたフロアを後にして

エレベーターを待つ。

廊下から灯りが漏れていた。

電気の消し忘れかと思い、加奈子が近づくと

見るつもりのない不倫現場だった。

鮫島課長が山岸さんを引き止めていた。

「もう少しで離婚なの。

だから待っていてくれない?」

「もう聞き飽きましたよ。その言葉。

俺は終わりにしたいです。」

山岸が帰ろうとしている。

鮫島課長は男社員も多い中、気が強く

実力も評価され最短期間で課長へ出世した

女子社員の尊敬する上司だ。

子供が2人いたと話を聞いたことがある。

山岸は誰にでも嫌な顔ひとつせず仕事のできる人。

和やかに微笑むけど

毒も笑いながらさらっと吐くから煙たがれる。

だから好き嫌いは別れていた。

加奈子からすれば山岸は苦手な人物だ。



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