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恋の行方を探してください【完結】
第29章 【二十九話】手当たり次第
 由臣はそれだけ言うと、液晶画面に視線を落とし、パチパチとキーボードを打ち始めた。

「槇英太郎の住まいはジュエリー・コバヤカワ近くのマンションだな。高木小夜は……小早川食品の近くのアパートに住んでいる。二人とも一人暮らしのようだ」
「なにを調べてるんですか」
「グループ会社のデータベースにアクセスして、情報を見ている。槇の写真、見るか」
「……由臣さん、それ、正規の手順を踏んでます?」
「あぁ、もちろんだ。カードを使ってグループの回線に繋いで見ている」

 統括事務局で真那がハッキングしたと言っていたのを思い出して聞いたのだが、正規なルートから情報を得ていると知り、ホッとした。

「槇の写真は……と。あぁ、身分証の写真が出てきたな」

 そう言って、由臣は美哉に画面が見えやすいようにノートパソコンを持ち上げて、後ろに掲げて見せた。
 ブルーバックに写っている写真は、由臣が言うように身分証のために撮ったものなのだろう。小夜や山岡、それにデザイン部の部長も言っていたが、イケメンの部類に入る顔なのだろう。一重で目つきが鋭く、顔も細長いので狐のように見えなくもないが、整った顔をしているのは分かったのだが……。
 ぞわり、と久しぶりに痛いくらいの鳥肌が立った。

「あの、由臣さん、もういいです」
「ん、そうか」
「……あの、今、初めて知ったんですけど」

 由臣はノートパソコンの膝の上に置くと、槇の写真を閉じた。

「ここ数日、御庭番の人たちが近寄っても鳥肌が立たないからすっかり忘れていたんですけど」
「あぁ」
「その反動のせいなんでしょうか。槇さんの写真を見た途端、ものすごい鳥肌が立って……表面がちりちりするほど痛いなんて、ちょっと勘弁してほしいです」
「鳥肌が立った?」
「はい」
「今まで、男性の写真を見て、鳥肌が立った覚えは?」
「記憶にある限りはないですね」

 だから油断して、思いっきり見たのがいけなかったのだろうか。

「まさか悪化した……なんてことは」
「男を知って、欲望がなにか分かったからあり得るかもな」
「……由臣さん、セクハラです」
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