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恋の行方を探してください【完結】
第36章 【三十六話】みんな私の御庭番ですから
 あまりのことに、美哉は大きく頭を振った。

「信じたくないよな? 俺も母に連れられて初めて二人で外出して、嬉しかったのに、そんな話を聞かされた挙げ句、殺されかけた」

 だから、と由臣は続けた。

「人の手が介入したと分かるものだと、口にできない」
「え、でも」
「美哉が作ったものは不思議と食べられるんだ」

 最初の日の朝食前、ご飯は気にしなくていいと言われたことを思い出した。

「それは……」
「美哉は俺に初めてばかりを与えてくれているわけだ」

 そう言って、由臣はにやりと笑うと、耳元で囁いた。

「だから、俺の初婚を美哉にあげるよ」

 少し掠れた、それでいて壮絶な色気を伴った声音に、美哉はぞくりとした。
 しかも耳を甘噛みし始めたのだから、美哉はたまったものではない。ぷるぷると頭を振って由臣を振り払い、必死になって声を出した。

「い──っ、いりま、せんっ!」
「この先の俺の初めてはすべて美哉に捧げるぞ?」
「要りませんって!」

 ドンッと由臣の身体を突き放せば、簡単に離れていった。
 由臣の暑苦しいくらいの体温がそれで逃げていき、自分でした行動だったのに、美哉はショックを受けていた。

「御曹司でイケメンなんて、要らないです!」
「そうは言っても、俺は大変、お買い得物件だと思うんだ。小早川の三男でほぼ責任なし。美哉も認めるイケメン。生涯、美哉だけを愛していくと誓えるくらい、美哉のことを愛しているんだぞ?」
「お買い得物件どころか、不良債権じゃないですか」
「どのあたりが不良債権なんだ」
「すべてにおいて、面倒くさいところ。由臣さん、重たいですよ……。お母さまとのことを話せば同情が買えると思ったかもしれませんが、ほんと……ひどい、です」

 そういうと美哉は由臣から視線を逸らし、俯いた。ぽたり……と美哉の瞳から涙がこぼれ落ちた。

「またそうやって泣く」
「だって……!」
「……こうでもしないと、美哉は俺から離れていこうとするだろう?」
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