この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
恋の行方を探してください【完結】
第19章 【十九話】名前が違います!
 もちろん、出て行くと言っても、宛てがあるわけではない。とはいえ、ここまで言っても修正してくれないようならば、文無しでも出て行く覚悟はあった。

「出て行くと言っても、金もないのに?」
「なくても、私、女ですから、どうにでもなります」

 美哉は由臣の手を振り払うと、立ち上がった。

「私は宇佐見美哉であって、小早川美哉ではありません。そんな嘘の身分証、要りません」
「…………」
「修正してもらえないのなら、本気で出て行きます」
「……美哉」
「由臣さん」

 美哉は由臣に向き直り、じっと顔を見た。
 由臣の表情はかなり凍り付いていて、あと一押しであると分かった。

「与頭として、最初で最後のお仕事をさせてもらっていいですか」

 由臣は目を見開き、美哉を見上げた。

「私、与頭を辞めますけど、私に忠誠を誓った御庭番たち、処分するなんて物騒なこと、止めてくださいね」
「ちょ……ちょっと待て、美哉!」
「それから、次の与頭が見つかるまで、由臣さん、また代理を……」
「分かった! 分かったから! 俺が悪かった! 直す、直すから! 出て行くとか、助手と与頭を辞めるって言うのは止めてくれ!」

 由臣の情けない声に、美哉はさすがにやり過ぎたかなと思ったけれど、ここまで言わないと由臣は動いてくれないのが分かった。とはいえ、これは何度も通用する手ではないと思ったし、多用したらただのわがままな嫌な女になってしまうので、今回だけにしようと心に決めた。

「分かればいいんですよ、分かれば」

 二人のやりとりを黙って見ていた真那は、ぷっと吹き出した。

「ぷっ、さいこー! さっきもだけど、美哉さん、三男を翻弄して、すごい! あなた、最高よ!」
「え……あ……」

 すっかりここに真那がいることを忘れていた美哉は、その声に顔を真っ赤にした。

「あ……私……」
「うんうん、いいわね。三男を手のひらの上で転がすくらいじゃないと、与頭なんて務められないわよ! それに三男のあの顔! 当分、笑えるわ!」
「きのこちゃん、おまえ……覚えておけよ」
「わたし、きのこじゃないから覚えていられないわ」
「…………っ!」

 言い負かされた形になってしまった由臣を見て、美哉は思わず真那と顔を合わせて、お腹を抱えて笑ってしまった。
/277ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ