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狂い咲く花
第15章 二、月光香 - 危険な快楽
「気にいられたみたいね」

「僕…小さい子初めて抱いた…温かくてかわいい…」

――いないいないばぁ!

とあやしながら蘭子を手懐けていく。
その理由を誰も知らない…

「その荷物なに?」

荷造りをしている麻耶を指さして聞くと、葉月がため息交じりに答えた。

「家に帰ると言い出して、帰り支度だよ…父さんも母さんも、俺も仕事で一緒に帰ってやれないからって言っても今日帰るって言い張ってね…姉さんだってついてくるなって言うし…ほらっ…最近物騒だろう?女が襲われたりさ…」

「あはははっ。麻耶らしい。子供生まれても頑固なところは変わんないね」

「笑い事じゃないって…みんな心配しているのよ」

「ごめんごめん…ねぇ。麻耶?…麻耶!!」

声を掛けても気が付かない麻耶に近寄って帰り支度をしている手を止めさせた。
手と手が触れ合い、お互いの温もりが伝わる。

「あっ…南和…」

「一人で帰るんだって?」

「ひっ…一人じゃないもん…蘭子と2人だもん…」

しどろもどろで返事を返す。

「だったら、僕も一緒に行くよ…方向一緒でしょ?」

片目をつむって合図を送る。

「…同じ方向なら…お願いしようかな?」

麻耶は、南和に教えられたように言葉を繋げる。
これは2人で決めた芝居だった。
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