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山猫と狼
第5章 サクリファイス
翌朝、ロイは侍女の声で目を覚ました。


「朝食をどうぞ」


紅茶の良い香りと、焼きたてのパンの香ばしさがロイの鼻を刺激する。


ロイはふいに、故郷が懐かしくなった。


せめて、首都のあるフロルは無事であってほしい。


そんなことを考えていると、クロードがやって来た。


ロイは彼の姿を見ると昨夜のことをまざまざと思い出し、さっと身構えた。


「おはようございます、ロイ殿下。ははは、朝からあなたを取って食ったりはしませんよ」



「お前に一つ質問がある」


「なんでしょうか」


「フロルは無事か。私の家族は無事なのか」


クロードはもったいぶったように一つ咳払いをして、口を開いた。


「・・・はい、無事ですよ。


私の狙いはロイ殿下なのですから、あなたのご家族が私どもの邪魔をしない限り、ご無事でいられます」


「私がここにいることを家族は知らない。


捕らえられたと知ったら、援軍を連れて奪還に来るかもしれない」


ロイは不安げな面持ちになる。

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