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暁の星と月
第3章 暁の天の河
「…最近ではパリの夜会でお会いしたが…まるで女王様のように周りにフランス人の信奉者達を侍らせておられた。実に煌びやかなお姿だったよ。まだ18歳だが末恐ろしいお嬢様だ」

暁は尚も楽しげに話す礼也を見上げ、不思議そうな顔をした。
礼也は元々、光のように自由奔放な気の強い女性は好みではない。
梨央のように清楚で淑やかな白薔薇のような女性が好みのはずだ。
大紋も興味深げに目を輝かせる。
「…お前、まさか光さんに関心があるんじゃないのか?」
礼也はすぐさま肩を竦める。
「まさか。…私は大和撫子が好きなんだ。…正直、光さんのようにお転婆で気の強い女性は苦手さ。ただ面白い方だと思っているだけさ」

…ところで…と、礼也はナプキンで品良く唇の端を抑えると大紋を見た。
「今夜は暁をうちの別荘に連れ帰っていいか?」
「え?なんだって?」
大紋は思わず聞き返した。
礼也は隣の暁の頬を軽く抓りながら微笑む。
「…久しぶりに暁とゆっくり過ごしたいのさ。暁への土産も渡したいし…。お茶会の打ち合わせもある。お茶会までの2日はうちに戻らせたいのだ。…春馬、いいだろう?」
暁はいきなりの兄の申し出に頬を薔薇色に染め、俯いた。
大紋はカトラリーを置き、顎の前で両手を組んだ。
暁をじっと見る。
「…暁はどうしたい?…君がしたいようにすればいい…」
はっと、黒目勝ちの美しい瞳が大紋を見上げる。
何か言いたげな潤んだ眼差しで見つめたのち、暁は申し訳なさそうに目を伏せて答える。
「…あの…兄さんと話したいことがあるので…今夜は兄さんと帰ります…」
その答えに、大紋は思わず衝撃を受けたが、すぐになんでもないように頷いた。
だが、唇が引きつり上手く笑えない。
「…そうか。…それもいいな。ゆっくり甘えておいで」
「…春馬さん…」

礼也は陽気な声を上げ、暁の肩に手を置く。
「ありがとう、春馬。暁、久しぶりにお前の話を沢山聞かせてくれ。…春馬、明後日のお茶会には必ず来てくれよ?…私と暁だけでは光さんに歯が立たないかもしれないからな」
「わかったよ…」

大紋はグラスの赤ワインを一気に呷る。
暁と目が合う。
暁は、済まなそうな…しかし明らかに礼也に乞われたことが嬉しそうな複雑な顔をしていた。

「…楽しんでおいで。大好きな兄さんとの夜を…」
大紋は低く呟いた。



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