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暁の星と月
第6章 その花のもとにて
兄の礼也は、暁の学業や交友関係や個人的な様々なことには煩く口を出したりはしない。
暁の話を優しく聞いて、見護っていてくれるのが常だった。
しかし、マナーや社交術や会話、ダンスなど、社交に関わることにはかなり厳しかった。
間違ったことをすると、正しいことができるまで何回もやり直しをさせた。
…それは、暁の出自のことであれこれ揶揄されないようにと…社交界で嫌な思いをしないようにという礼也の愛情だったのだ。
それが分かっていた暁は少しも辛いとも思わず、礼也の教えに素直に従い努力した。

…だから数年後、暁が社交界デビューした時には彼のことを馬鹿にしたり揶揄するものは一人としていなかった。
…夜会に登場した暁は生まれながらの貴公子のように美しく、気品高く、理知的で、優雅であったからだ。

だが、馬術に関しては最初から暁が怪我をしないかという心配ばかりしていた。
「礼也は過保護なお母さんみたいだな」
親友の大紋に揶揄われていたこともある。

「…この綺麗な貌に傷でもついたらどうするんだ?…頼むから障害馬術はもうやめてくれ」
手を握られて懇願され、暁は仕方なく馬場馬術に戻ることにしたのだ。

…顛末を聞いて、月城が可笑しそうに笑った。
「礼也様は本当に暁様を可愛がっていらっしゃるのですね」
「…ありがたいけれど、心配性すぎるよ。…僕はもう21だ」
月城は、ああ…と小さく溜息を漏らす。
「…もうそんなに大人になられましたか…。初めてお会いした時は、まだ可愛らしい少年でいらしたのに…」

…北白川家のバルコニーで寂しげに遠くを見ていた美しいが頼りなげな少年は、今や社交界の華とも謳われるような、気品と優雅さに満ち完璧な美を兼ね備えた貴公子へと成長していた。
月城の眼鏡の奥の端正な眼差しを真っ直ぐに受け、暁は照れたように笑う。
「…月城には僕が小さな時から知られているから…なんだか恥ずかしいな。…馬場でもよく会うし…」

…月城は、イギリス大使をしていて不在がちな伯爵に代わり、5頭もいるサラブレッドの愛馬の世話や、時には乗馬して、馬の様子を確かめたりとこの乗馬倶楽部には時々出入りしていた。
伯爵の従者に仕込まれたという月城の乗馬の腕は大変に優れていて、その美しい騎乗姿は暁も見惚れてしまうほどだ。
彼目当てで、馬場に来る有閑マダムも多いと、噂好きの夫人に囁かれたこともある。
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